■ 過去の『一言』(2001〜2023)
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(2013年 1月 〜 2013年 6月)


(2013年06月27日) 【エンジン始動】[▲ 先頭へ]
1年365日の内、私にとって大きな意味のある日が何日かあります。その中の1日が昨日でした。うつのみや書店本店へ行き、来年の大学入試向けの英語、数学の問題集を大量に購入しました。毎年この時期に、国公立大学の今年の2次試験をまとめた問題集や大手予備校のマーク式問題集が発売になります。

これらの新しい問題集を買うと、新鮮な気分になり、気持ちは引き締まります。「さぁ、今年もやるぞ!」という感じです。高3生の皆さんは、今月初めの総体・総文が終わって本格的な受験勉強が始まりました。私は、紙袋2つ分の問題集を買って、入試に向けてアクセルペダルを踏み込みます。

先ずは、各問題集の内容や難度をチェックします。次に、英語、数学それぞれの表を作って、どの問題を解くかを検討します。最後に、センター試験、2次試験に向けて、難度の観点からどの順番で解くかを検討します。受験生が自信を失うと困りますから、試験直前1ヶ月に解く問題の選択・解答順序には十分配慮します。こうした検討をした上で、実際に少しずつ解いていき、高3クラスの授業で使えるかどうかを確かめます。

来年1月18日・19日のセンター試験まで6ヶ月半です。私の気持ちもスイッチ・オンになりました。今年も頑張ります!

(2013年06月20日) 【記述式問題】[▲ 先頭へ]
今週、近くの中学の3年生は、今年度初めての実力テストがありました。試験範囲は1年生で学んだ範囲です。サミット・ゼミでも、このテストに備えて1年分野を復習してきました。数学の問題練習をしていて、これはまずい、思ったものがあります。「資料の散らばりと代表値」での記述式問題です。

相対度数や平均値を求めたり、ヒストグラムや度数折れ線を描いたりする問題は難なく解けていました。しかし、2つの度数分布表やヒストグラムを比べて、わかることを答える問題の出来具合は最悪でした。2つの表やグラフの異なる点を分析して、違いを把握し、それを言葉で表すことが上手く出来ていませんでした。

石川県の高校入試では、2年前に記述式問題が多くなり、理科・社会の平均点が50点を割り込みました。今年の入試でも、社会の平均点は45点でした。問題を見てみると、記述式問題が数多く出題されていました。今の中学生は記述式問題に弱い傾向が顕著に表れています。

理科・社会の記述式問題では、先ず、あることの背景や原因を理解しなければなりません。数学の記述式問題では、データを比べなければなりません。そして、それらを文章で説明します。単なる記憶や計算ではなく、理解する力や分析する力、すなわち考える力が必要であり、さらに文章を書く力も要求されます。

これらは社会で活躍するために必要不可欠な要素です。深く思考して自分の考えを持ち、それを言葉で上手く表現できる力をもっと鍛えなければならないと改めて思いました。

(2013年06月13日) 【現場主義 その2】[▲ 先頭へ]
トヨタ自動車の豊田章男社長は自動車レースのレーサーでもあります。先月ドイツで開催されたニュルブルクリンク24時間耐久レースにも出場しました。レーサーには危険はつきものです。予選や本選出場、移動には時間もかかります。当然、社内外から批判もあります。しかし、豊田社長は、レースに出場して得るものの方が大きいと考えているそうです。

豊田社長はよく「道がクルマを作る」と話されているそうです。魅力的な車は、研究室や整備されたテストコースからは仕上がらず、過酷な路上で鍛え上げられるとの信念です。正に現場主義だと言えます。優れた企業のトップは共通して現場を大切にします。リスクを冒しても、クルマの魅力を追求する社長の姿勢には感動さえ覚えます。

先週の本欄で、センター試験廃止を伴う大学入試改革について述べました。教育における制度改革は、企業においては事業部制の導入や常務会の設置のような組織改革です。豊田社長が実践している現場主義は、教育においては学校現場を直視することでしょう。

教育において、制度の問題と現場の問題は車の両輪のようなものです。両方の観点から議論されるべきでしょうが、学校現場を近くから見ている私にとっては、学校現場で生じている問題が本当に議論されているのかと疑問を感じます。

安倍内閣で教育問題を議論しているのは教育再生実行会議です。前々回の本欄「小学英語が正式教科に」では、同実行会議の第三次提言「これからの大学教育等の在り方について」に関して述べました。本年2月26日には第一次提言「いじめの問題等への対応について」、4月15日には第二次提言「教育委員会制度等の在り方について」が出されました。

学校現場に関しては、第一次提言でいじめと体罰が議論されています。確かにこれらは重要な課題です。しかし、学校現場にはもっと大きな問題があり、それが社会全体の問題としてクローズアップされていないと感じます。最大の問題点は、先生が子供達に十分に向き合えていないということです。モンスターペアレントへの対応で学校側が苦しんでいること、雑多な事務に追われて学力向上に関する取り組みが不十分であること、教室内で子供達が騒いだり立ち歩いたりして秩序が保たれていないこと(子供達が先生を甘く見ていること)などを指摘できます。

然るべき環境で子供達が教え育てられることが最も大切であり、この観点から全て議論されるべきです。第一次提言の「いじめ」はわかりますが、何故第二次提言の内容が教育委員会なのか、理解に苦しみます。学校現場で、教育に真摯に取り組もうとしている先生方は悲鳴を上げているはずです。また、無責任な先生のために悲鳴を上げている子供達もいるはずです。

教育再生実行会議の議論を見ていると、それなりの形、制度を作ろうとしているようです。しかし、学校の現場を直視しているようには思えません。豊田社長がこの状況を見れば、どのように考えて、どのように対応するでしょうか。

(2013年06月06日) 【どうなるセンター試験?】[▲ 先頭へ]
「センター試験廃止へ」今朝の日本経済新聞の1面トップ記事の大見出しです。1990年の導入から20年以上が経過し、入試改革の話もちらほら耳にしていましたから、入試制度が変わるかもしれないとは思っていました。しかし、突然の日経新聞の1面トップでしたから、さすがに驚きました。

文部科学省は、大学入試センター試験を5年後をメドに廃止し、高校在学中に複数回受けられる全国統一試験「到達度テスト」(仮称)を創設して大学入試に活用する検討を始めたそうです。その背景として、大学志願者の基礎学力を測るという当初の目的の達成が難しくなってきたこと、受験のチャンスは年1回に限られ1点刻みで受験者をふるい落とすための手段となっていること、複数回受験できる共通テストでは学力を正確に把握でき、高校生の学ぶ意欲を高めるとの期待があることが挙げられていました。

私は、毎年1月のセンター試験実施日の翌日に英語と数学の問題を解いています。英語の問題は、発音・アクセント、文法・語法、幾つかのパターンの英文読解から構成されています。非常に良い問題だと思います。数学は、絶対的な計算力を前提にして、基本問題から応用問題までがバランス良く出題されています。これも良問です。英語、数学とも、センター試験と記述式の2次試験の組み合わせは、大学入試として特段の問題はないと考えます。

新聞では、大学志願者の学ぶ意欲を引き出すことで高等教育の質を高め、国際社会で活躍するグローバル人材の育成につなげる、と説明されていました。上記の制度改革の背景として挙げられた事項も含めて、全く釈然としません。英語、数学について言えば、現行のセンター試験と2次試験による大学入試に向けた受験勉強をしっかりすれば、十分にグローバル人材の素地は固まります。一体何が問題なのでしょうか。

政府の教育再生実行会議は、現在一生懸命になって絵に描いた餅を作っていますから、今回の話もそれかもしれません。5年後をメドにした抜本改革とのことですが、大学入試の制度に本当に問題があるのであれば、5年後ではなく2年後、3年後に改革すべきだと思います。グローバル人材育成のための制度改革を5年後に、真剣に考えている話だとは思えません。

(2013年05月30日) 【小学英語が正式教科に】[▲ 先頭へ]
小学校の英語が正式教科になるというマスコミ報道がありました。政府の教育再生実行会議の提言です。そこで、同実行会議が一昨日(5月28日)に出した第三次提言「これからの大学教育等の在り方について」本文を読んでみました。全10ページの第三次提言は、「我が国の大学を絶えざる挑戦と創造の場へと再生することは、日本が再び世界の中で競争力を高め、輝きを取り戻す『日本再生』のための大きな柱の一つです。」という文言の通り、グローバル化に対応する大学改革が内容でした。

提言の中に、「初等中等教育段階からグローバル化に対応した教育を充実する。」という項目があり、小学校の英語学習の抜本的拡充に関する記述がありました。下村文部科学相は、この内容を受けて、小学校の英語教科化は4年生からが目安と述べました。

小学校での英語教育の話が出る度に思うのは、安定した基礎学力が前提になっているのかということです。読み・書き・ソロバンが確固としたものでない状況で、英語を勉強することに対しては大きな疑問を感じます。百害あって一利なし、とまでは言いません。小さな時から英語に触れること自体は悪いことではありません。一利くらいはあります。しかし、その前にやるべき重要なことがあるだろうと言いたいです。

英語は英語圏諸国の「国語」です。お遊び程度の英語ではなく、大学で使ったりビジネス社会で実際に使ったりする英語では、読解力がなければ使い物になりません。例えば、難関大学入試の英語の問題では、読解力がなければ英文の内容が理解できません。今春、京都大学に合格した生徒さんがいます。入試の過去問の添削では、「筆者の意図を読み取りなさい。」と何回も赤ペンを入れました。英語は単なるツールなのです。

昨日、優秀な高2クラスの授業がありました。休憩時間に、小学校での英語教科化に関して、彼らの意見を聞いてみました。「お遊び程度の英語なら、やっても意味がない。」「中学からしっかり勉強すれば良い。」という意見が出ました。

教育再生実行会議は、今後、大学の入試改革や小中高の6・3・3制の見直しを議論するそうです。制度の見直しも必要でしょうが、最優先事項であるべき児童・生徒の基礎学力について議論するべきだと強く思います。現状がどうなっているのか、課題があるとすればどう改善するべきか、英語を含めて学習内容全体をどうするかという議論がなされるべきです。基礎学力がぐらついていれば、制度云々の話は砂上の楼閣でしかありません。

(2013年05月23日) 【意識改革は難しい】[▲ 先頭へ]
中学生の皆さんにとって今年度初めての定期テストが近づいています。中2クラスの生徒諸君には、5教科手抜きすることなくテスト勉強するように話しています。2年生では各教科で大切な分野を学びますが、最も大切なことは、各科目満遍なく準備することだと考えています。

サミット・ゼミには中2〜高3クラスがあります。多くの生徒さんとは、彼らが中2または中3の時から一緒に勉強し始めます。その時までにテスト前の勉強が甘くなっていた人達の多くは、一緒に勉強し始めてからも、テスト勉強で手抜きを繰り返します。大体は嫌いな科目の勉強が甘くなります。

中2の皆さんの中には、高校入試はまだまだ先のことなので、2年生の時は適当に勉強して、高校受験生の中3になってから頑張ろうと思っている人が少なからずいます。しかし、今できないことは将来もできません。2年生で手抜きが続いた人は、3年生でも続くものです。そして、入試で痛い目に会います。

何故勉強しなければならないか、サラリーマン時代の具体的事例を中学生の皆さんに話しています。テスト前は繰り返し、満遍なく準備の勉強をするように言います。それでも手抜きを続ける人がいます。テスト勉強での手抜きが慢性になってしまった人達は、「また、言っている」と私の話を聞き流します。それほど意識改革は困難です。

(2013年05月15日) 【あせりをコントロールする】[▲ 先頭へ]
先日、授業後にある高3生と話しました。受験勉強における1つ1つの課題がうまくこなされていないように感じたからです。いろいろ話すうちに、勉強がうまく進まない最大の原因は「あせり」であることが分かりました。高3の大学受験生になり、やるべき勉強量の大きさを前にして、やらなければならないという気持ちが上滑りしているのかもしれません。

あせりがあれば、目の前の1つ1つの課題に集中できません。そしてその課題の達成は不完全なものになります。受験勉強では基礎を確実に固める必要があります。1つ1つの課題の理解・暗記・思考が甘ければ、基礎がぐらついて学力は不安定なものになってしまいます。こうなると、更なるあせりにつながります。

まだ社会人経験が浅かった頃、私自身があせって仕事が滞った経験は本欄2012年8月16日付け「1つ1つこなす」で述べました。他の案件が頭にちらついて1つの仕事に集中できていなかった私に対して、部長が言って下さった「1つ1つこなしなさい」という言葉は、高3の皆さんにも該当します。他の課題のことは決して念頭に置かず、目の前の課題に集中して、1つ1つを着実にこなしていけば、気持ちは安定するはずです。

ほとんどの高3生があせりを覚えているでしょうから、他の皆も同じだと自分を客観視することも大切だと思います。このように考えれば心に余裕が生まれるでしょう。また、全部はできるはずがないと開き直ることも1つの方法です。人事は尽くしている、自分に出来る限りのことをしていると思えば、「あせり」が心のすき間に入り込むことはないかもしれません。

(2013年05月09日) 【才能の発掘 その2】[▲ 先頭へ]
3月中旬に開講した中2クラスはもうすぐ2ヶ月になります。この間、英語・数学とも1年分野の復習をしてきました。作文練習についてはブーイングが出ましたが、鬼になって実行しました。

先日、数学の図形でやっかいな問題がありました。正八面体の展開図があり、ある点や辺が、展開図を組み立てた時にどの点や辺と重なるかという問題です。間違えた生徒さんには見取り図を描くように指示しました。見取り図に展開図の記号を書くことも易しくありませんが、これができれば答えが出ます。

中2クラス4人の中に驚くべき発言をした人がいました。「こんなの簡単だ。」 その生徒さんは、見取り図を実際に描かなくても、展開図からイメージできて、ほとんど瞬間的に答えを出しました。驚きました。私自身は、展開図から見取り図をイメージすることはできません。実際に描かないとダメです。

才能とはこういうものかと思いました。他人には真似できない能力であり、将来の仕事を検討する際に是非活用して欲しいものです。上述のように空間図形認識が優れていれば、自動車その他の商品デザインや都市空間等のデザインの仕事で活躍できるでしょう。

縁あって通ってくれる生徒の皆さんをしっかり見つめ、彼らが持つ才能を見出したいと改めて思いました。

(2013年05月02日) 【高3最初の模試 その2】[▲ 先頭へ]
ゴールデンウィーク真っ只中です。世の中は浮き浮きモードですが、当ゼミはほぼ通常の授業体制で普段と変わりありません。ただし、私の気持ちは引き締まっています。高3生にとっての最初の模試が今週末に行われるからです。

本欄で何回も述べた通り、この模試の意味合いはかなり大きいです。来年の大学入試の結果をある程度予想できるからです。高3の大学受験生は皆勉強しますから、5月の模試から成績を伸ばすことは非常に難しいです。例外はあるでしょうが、この模試結果からの伸び代は大きくありまぜん。

もちろん5月の模試で全てが決まる訳ではありません。模試結果の分析を含めて、生徒の皆さんの学習法をチェックしたり、メンタル面でフォローしたりして彼らの学力の伸びをサポートします。しかし、5月の模試でボーダーラインに届かないD判定(合格可能性35%)以下であれば、志望校の水準に至る可能性はかなり低くなります。

昨日の高2クラスでは、高3最初の模試の持つ意味合いを話しました。高1・高2の学習内容がキチンと理解されて自分のものになっていれば高3・5月の模試は恐くはありません。高2の皆さんには、学校の授業を大切にして高2としての勉強をしっかりするように指示しました。

(2013年04月25日) 【門出の言葉】[▲ 先頭へ]
大学の入学式で、各大学のトップはどのような言葉を新入生に贈ったのでしょうか。今週の月曜日(4月22日)の日経新聞に、大学の入学式での挨拶の特集がありました。

京都大の松本紘学長は「歴史に学び、自国文化を背景に持ちながら、自分の考えを国際社会で主張できる論理的な思考能力、発信能力、積極性や自主性」が欠かせないとしました。早稲田大の鎌田薫総長は「鋭い洞察力を持って問題の核心を把握し、多様な価値観を持った人々との相互理解を深め、自らの頭で解決策を考え実行していく力をつけて」と話しました。

いずれも素晴らしい式辞です。グローバルな時代、変化の時代に対応できる人材像が述べられています。日本人としてのアイデンティティーを持ち、国際社会において、問題の所在を発見し、その解決策を思考し、発信・実行できれば、この激動の時代で広く活躍できるでしょう。

高校での勉強は、両大学トップが求める能力・資質の基礎になっています。社会や英語の学習は松本学長の式辞内容につながります。論理的な思考能力や問題の核心を把握する力は、数学を勉強する過程で培われるものです。ただし、情報の発信や積極性、自主性、実行力はプラスαの要素になりますが…

ある受験雑誌に、受験勉強もまともにできないで、社会で活躍できるわけがないという指摘がありました。勉強ができても人格的に問題がある人が一部にはいるでしょうが、この指摘は当たっていると思います。生徒の皆さんが近い将来、社会で幅広く活躍するための基礎作りをコーチしている(上下関係を感じさせる「指導」という言葉は嫌いです。)という使命を改めて感じました。

(2013年04月18日) 【浪人の原因】[▲ 先頭へ]
当地の桜はすっかり散ってしまいました。今春の大学入試で「サクラチル」という残念な結果になり、自分の目標を目指して浪人生活に入った人も少なからずいることでしょう。私も1年間浪人した経験があります。新年度に入り、ある高2生と話した時のことです。英文読解の先生が変わり、説明が分かりづらくて授業が理解できなくなったと聞きました。それを聞いていて、自分の高校時代、浪人時代のことを思い出しました。

現役生の時の私は、数学は絶対的な得意科目でした。しかし、英語と国語は自信がなく、成績は良かったり悪かったりで安定していませんでした。成績が不安定だったということは、基礎がしっかりしていなかったからです。自分が甘かったということでしょうが、今から思えば学校の先生の教え方にもかなり問題がありました。

英語では、直訳すべきか意訳すべきかの指示がありませんでした。どちらをすべきか、何故そうするべきかの説明が欲しかったと思います。また、文法や単語の重要性について具体的、実践的に教えて欲しかったです。これらは全て河合塾の授業で克服しました。

国語の現代文では、私は設問の答え方を間違っていました。設問に対して、本文中にある筆者の言葉を私自身の表現に置き換えて答えて、いつも減点されていました。テストの答え合わせの後、いつも先生のところへ行き、何故自分の答えが違っているのかを尋ねましたが、「ここにこう書いてあるから」というのが先生の説明でした。「君の言葉で答えてはダメなんだ。現代文では、筆者の言葉で答えなければならない。」と言ってくれれば問題解消でした。この点については、河合塾の先生が薦めてくれた薄い参考書で解決しました。

私は、浪人の1年間で英語や国語がよくわかるようになりました。特に英語については、社会人になってからの海外ビジネスや、現在の英語の授業に活かされています。その1年間は価値のある1年間だったと思っていました。しかし、今、中高生諸君に勉強を教えているという立場から考えると、無駄な1年だったように思えます。高校の時に、どういう勉強の仕方をするべきかを正しく指示してもらっていれば、浪人せずにすんだかもしれません。

進学校でも、冒頭のような先生がいます。また、このやり方では学力がつかないだろうと思うような授業をしている先生も少なくありません。徒然草に「何事にも先達はあらまほしきことなり」という言葉があります。教育における「先達」の役割の大きさは計りしれません。しかし、良い先生と出会えるか否かは運次第というのが現実のようです。ため息が出ると同時に、自分は大丈夫かと自問しています。

(2013年04月11日) 【深い感動】[▲ 先頭へ]
3週間前の本欄「基礎が命」では、今春、京都大学に合格した生徒さんへのアンケート調査に関して述べました。そのアンケートの中からもう1つご紹介したいと思います。

「受験勉強で得たもの」という質問に対して、「2次の本番で、1人で京都に行った時、受験生やその応援でごった返している京大を見て、感動して泣きそうになった。京大を受けて本当に良かった、と心から思った。」と答えてくれました。私は、これを読んで泣きそうになりました。この生徒さんには、勉強の内容だけではなく受験に向かう姿勢についても厳しく接してきたので、この言葉は私の心に沁み込みました。

彼は、長い期間にわたり目標を見据えて小さな努力をコツコツと積み重ねてきた人だけが味わえる深い感動を覚えました。人生は長いのですが、このような感動を味わえる機会は滅多にありません。大学入試は多くの人がチャレンジします。努力の賜物である奥深い感動を味わうことができるチャンスと言えます。この感動がその後の人生に及ぼす影響は計りしれません。何か苦しいことが起こった時、受験での頑張りは心の支えになるはずです。

今年度の高校各クラスにも頑張っている人達がいます。彼らもそのような感動を得られるようにサポートしていきたいと思います。決して平たんな道ではなく、様々な課題、障害が出てくるでしょうが、一緒に乗り越えます。おこがましいのですが、この過程を通して人材を育てたいと願っています。

(2013年04月04日) 【英語の親ガメ】[▲ 先頭へ]
親ガメの背中に子ガメを乗せて、子ガメの背中に孫ガメ乗せて、親ガメこけたら皆こけた、というナンセンス・トリオ(お笑いグループ)のギャグがありました。英語における親ガメは、be 動詞と一般動詞です。両親のうち、力の強い方(お父さん、お母さん?)がbe動詞です。

3月半ばに開講した中2クラスでは、英語・数学とも1年範囲を徹底的に復習してきました。1年で習う英語の大きな柱は、be動詞と一般動詞、進行形、助動詞canの3つです。be動詞と一般動詞という親ガメの背中に、進行形と助動詞という長男長女が乗ります。そして2年以降で習う未来形、不定詞、受け身等の弟、妹達も次々に親ガメに乗ります。前置詞や接続詞は孫ガメといったところです。

英文法全ての基礎であるbe動詞と一般動詞の理解はそれほど重要だと考えます。be動詞と一般動詞は、否定文・疑問文の作り方が異なり、1つの文で一緒に使われることは原則としてありません。私は、次のように教えています。

一般動詞はbe動詞が大好きで一緒にいたいと思うのですが、be動詞は一般動詞のことが嫌いで、「お前はあっちへ行け」と言います。しかし、それでも一般動詞はbe動詞が好きで、「一緒にいさせて」と懇願します。それで、仕方無くbe動詞は同居を許しますが、条件をつけます。「化粧をして形をかえろ」一般動詞はもちろんbe動詞の条件をのんで、ingをつけた形に変わり、進行形ができあがります。be動詞の方が強いので、進行形の否定文・疑問文の作り方は、普通のbe動詞のそれと同じです。

このようなbe動詞の強さに引きずられて、3年生になっても、I am not play tennis.というような文を書く生徒もいます。be動詞の呪縛といえる現象です。この呪縛にかからないように、1年の間にbe動詞と一般動詞について根本的に理解しておかなければなりません。そうして初めて、親ガメは、たくさんの子ガメを背負えるのです。中2、中3になって、“I am not play tennis.” “He is play tennis.” というような英文を書いている生徒さんはかなりヤバイです。

(2013年03月28日) 【TOEFL】[▲ 先頭へ]
久し振りに「TOEFL」という言葉を目にしました。自民党の教育再生実行本部は、国内全ての大学の入学試験を受ける基準として、英語運用能力テストであるTOEFL(トーフル)を活用する方針を固めたそうです。大学・学部毎に、TOEFLスコアによる受験資格を定めるものです。

TOEFL(Test of English as a Foreign Language)は日頃よく耳にするTOEIC(Test of English for International Communication)とは異なります。TOEICは主にビジネス英語の実力を測るものであるのに対して、TOEFLは英語圏の大学への留学に必要な英語力証明のためのテストです。私自身、一度TOEFLを受験したことがあります。日産自動車の社命留学生試験に合格し、アメリカの大学院留学を目指していた時です。難しいテストだったと記憶しています。(ただし、仕事の関係で結局は留学しませんでした。)

このニュースを見た時、何故、日本で一般化しているTOEICではないのか疑問に思いました。しかし、留学の活発化を通じて国際社会に通用する人材を育成する狙いがあるので、そのまま英語圏の大学への留学資格になるTOEFLの方が相応しいようです。東京大学大学院の大半の研究科では入試の際にTOEFLスコアの提出が義務付けられているそうです。

TOEICでは主に「リーディング」と「リスニング」の能力が判定されます。TOEFLではこれらに加えて「スピーキング」「ライティング」の能力も測定されます。英語のテストとしてはより厳しい内容になります。平成30年頃からの導入を想定しているそうですが、もし実現すれば、中高の英語教育は大きな変化を迫られます。

大学入試の受験資格にTOEFLを使うことは、国際化が進む現代においては自然な方向性かもしれません。しかし、英語は絶対的なものではありません。英語は単なるツールであり、大切なのは研究やビジネスの内容です。優れた研究を発表する時やビジネス交渉で必要があれば、翻訳や通訳を使えば良いとも言えます。英語が大の苦手という人もいます。教育再生実行本部の方針には、前のめりで視野が狭いという印象を受けます。

(2013年03月21日) 【基礎が命】[▲ 先頭へ]
志望大学に合格した受験生に、受験勉強に関するアンケート調査をしています。今春、京都大学に合格した受験生にも協力してもらいました。「後輩へのアドバイス」という項目に対して、「勉強は基礎が命である。難しそうな2次問題も、基礎の組み合わせに過ぎない。」という記載がありました。

至極当たり前のことですが、結局はこれに帰すると思います。私の浪人時代、山で言うと、山頂まで登る必要は全くなく、7合目付近まで登れば合格できると考えていました。勉強においては、9合目位までは基礎のように思えます。

2011年8月25日付け本欄「上京その3」で、高校時代に数学が苦手だった大学の友人の話を紹介しました。高2から高3になる春休みに、数学の教科書の例題を総復習した上で問題練習をして数学への苦手意識が消えていったという話です。これは、まさしく「基礎が命」の実例です。

数学は各分野の基本事項が理解できていれば、問題練習をすることにより応用力がつきます。英語は結局は文法と単語です。文法と単語は、大学入試の英語と闘うための武器であり、英語で合格点を取るためにはこれらの武器の使い方の練習をすれば良いということです。

当たり前のことを当たり前にする。基礎をしっかり固める。これは勉強だけではなく、スポーツでもビジネスでも全て同じです。

(2013年03月14日) 【中国語の人気】[▲ 先頭へ]
今年も東京外国語大学の合格者が出ました。英語がセールス・ポイントの1つであるサミット・ゼミにとっても、うれしい合格でした。

2次試験の出願に当たって、どの外国語にするかを受験するA君と一緒に検討しました。東京の経済団体幹部の友人にもアドバイスを求めた結果、候補に挙がった言語は、英語、スペイン語、中国語、ベトナム語でした。英語については説明の必要はありません。スペイン語は、使われている国が多いこと、中国語は、日本との経済的結びつきが強いこと、ベトナム語は、経済がこれから大きく伸びることから候補になりました。最終的に、A君は中国語を選びました。賢明な選択だと思います。

東京外国語大学でも言語によって入試難易度は異なります。英語が一番難しく、次はドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語です。これらの言語に続いて、中国語・ロシア語・ポーランド語・チェコ語がランクします。英語の一番は理解できます。しかし、外交問題はあるにしても、何故中国語が、ドイツ語やフランス語よりランクが下なのかは疑問です。この傾向は以前から続いています。

初めてこの事実を知った時、海外ビジネスに携わってきた私にとっては驚きでした。経済団体に勤める親友にとっても当然の驚きです。学問の世界と実際のビジネス社会の間には意識の隔たりがあります。産学融合が良いのか、産学分離が良いのか、評価は分かれると思いますが、面白い現象ではあります。

(2013年03月07日) 【英会話練習 その2】[▲ 先頭へ]
中2の皆さんは定期テストが終わりました。テスト後の授業では、作文練習とともに英会話練習もしました。英会話練習は、昨年12月に開始して以来3回目になります。昨年12月6日付け本欄で述べた通り、良い教材がないので、いろいろ工夫しながら進めています。3回目の英会話練習の内容は、発音記号の説明とスキット(寸劇)の暗記でした。

発音記号の説明は、もうすぐ中3の皆さんにとって難しいとも思いましたが、実行しました。NHKのラジオ講座を聞く際に役立つと考えたからです。(とは言っても、ラジオ講座を聞いていない怠け者もいますが…)定期テストの前は、試験範囲の教科書を復習します。生徒の皆さんには、1文ずつ読んで訳してもらいます。その時に、難しい単語は、教科書に発音記号が書いてあるものの、ほとんど発音できません。

将来、英語を話すようになった時、うまく発音できるようになって欲しいという願いもあります。ほとんどの日本人はうまく発音できませんから、正確に発音できれば、この人は他の日本人とはちょっと違うなと思ってもらえます。”Sit down.” が “Shit down.”(ウンチをして下さい。)にならないように。”We Japanese eat rice.” が “We Japanese eat lice.” (我々日本人は、シラミを食べます。)にならないように。”I love you.” が “I rub you.” (私はあなたを擦る。)にならないように。素敵な女性に席を勧める時 ”Shit down.” と言えば、引っ叩かれます。私達はシラミは食べませんし、愛する人を擦ってどうする…

スキットの暗記練習は突然思いつきました。その背景は、大学1年の時に受けた英語の授業にあります。NHKの英会話講座を担当されていた先生の授業で、英語教材に載っている話を暗記しました。毎回、面白い小話を暗記していき、みんなの前で発表しました。今でもタイトルと内容を覚えているものがありますから、英会話の授業内容の1つとして相応しいと考えました。

スキットの内容は自分で考えました。話の内容、英文とも中学生の皆さんにとって難しいものはNGです。彼らの生活に身近なものを題材にしました。工夫したポイントは英文です。彼らが習っている文法をいくつか盛り込みました。今回は、動名詞、SVOCや比較の表現を使いました。なかなか良いスキットができたと思います。(自己満足です。スミマセン。)

英会話練習の内容をどうしようかと頭を痛めてきましたが、1つの方向性が見えました。この対話形式のスキット練習は、スピーキングをする中で文法の確認もできます。結果として、NHKのラジオ講座のダイアローグのようになりました。今後、ラジオ講座以上に文法要素が充実したスキットを考えていくつもりです。スキット型の他にも2つ位の内容を検討しています。3本柱で英会話の授業を進めていければと考えています。

(2013年02月28日) 【最後の激励】[▲ 先頭へ]
「ライバルは、たった一人。自分だ。」今週月曜日、2月25日の日経新聞に載った河合塾の全面広告です。大学入試2次試験・前期日程当日の朝刊でした。大学入試に関して河合塾が続けてきた全面広告シリーズで、目を引く紙面でした。(ただし、試験当日の広告ですから、父兄はともかく、はたして何人の受験生にこのメッセージが届いたかは疑問です。)

大きなキャッチコピーの下には、小さな文字で文章が続いていました。なかなか良い内容でしたから、ご紹介致します。
「受験生の皆さん。そして離れて見守る保護者の皆さん。いよいよ、この日がやってきました。もうすぐ試験が始まろうとしている今、あなたはどんな顔をしていますか。ひょっとしたら鏡の中には、いつもと違う自分がいるかもしれません。その「いつもと違う自分」こそが、今日のあなたの最大のライバルです。ひとつ深呼吸して、それから笑って、そいつを吹き飛ばしてやりましょう。あなたはこれから、抱いてきた夢のとびらを開けるのです。怯むこともない。気負うこともない。その瞬間にできることのすべてを、思う存分、答案用紙にぶつけてくればいい。さあ、いつもの通り出かけましょう。夢をその手でつかむために。」

私は、毎年、前期日程の試験日の朝、受験生諸君に激励メッセージをメールしています。今年は、皆をリラックスさせるために、試験前日の24日にもメールしました。普通の内容では彼らの緊張をほぐすことはできないでしょうから、いろいろ考えました。送信したメッセージの一部は「おめでとう! 未来への扉を開けるチャンス到来です。こんなに素晴らしい機会は、長い人生でも滅多にありません。」というもので、プラス思考になれるように工夫しました。

中学生の時から一緒に勉強してきた人もいました。頑張っている彼らに「頑張れ」という言葉は軽すぎます。センター試験が近づいてきた頃から、受験生諸君はプレッシャーと闘っていました。その彼らの表情を思い浮かべながら、24日、25日のメッセージを考えました。楽しく笑ったこともありました。厳しい言葉をかけたこともありました。それら全てを踏まえた、心の底から湧き出る言葉でした。

(2013年02月21日) 【Critical thinking その2】[▲ 先頭へ]
大学入試・前期日程試験が来週月曜日(2月25日)に迫っています。この日を大きな目標として高3諸君と勉強してきました。彼らの人生にとって大きな意味のある試験であり、私も身が引き締まります。厳かな気分という表現が相応しい気持ちです。

センター試験後の高3・英語クラスでは、難関大学の2次試験・長文問題に取り組んできました。英作文では、課題英作だけではなく自由英作の練習もしてきました。センター試験で然るべき点数が取れていれば、一般的に2次試験では7割の得点で合格できますから、限られた時間での点数の取り方にも気をつけた実戦練習です。

実戦練習の授業中に、critical thinkingという言葉を繰り返し使ってきました。昨年10月4日付け本欄で紹介した言葉です。大阪の教育フォーラムで灘中学・高校の和田学校長から聞いたもので、自分の和訳や英訳を客観的、批判的に見直すことを意味します。

英文和訳では、英文構造が把握できているか、文脈に即した内容になっているか、自然な日本語になっているかがチェックポイントです。今までは、意訳ではなく直訳するように言い続けましたが、この段階に至れば、自然な日本語になるように意訳しても良いと指示します。課題英作では、課題の日本語のニュアンスが出せているか、文法や綴りにミスがないか、さらに英語らしい表現になっているかがチェックポイントです。また、自由英作では、テーマに沿っているか、まとまりのある内容になっているかがポイントです。

自分の和訳や英作を客観的に見直せば、問題に対する解答の精度が上がります。減点される個所がかなり減るはずです。入試では、1点、2点を争う勝負になりますから、減点が減ることは合否に直結します。誰でも自分の答えをある程度見直すでしょうが、客観的、批判的に見直すというレベルまでには達していないはずです。このcritical thinkingは合格答案作成のためのキーワードです。本当に素晴らしい言葉を教えて頂いたので、和田学校長には深く感謝しています。

(2013年02月14日) 【何でもランキング1位 金沢箔】[▲ 先頭へ]
日経新聞・土曜日の「NIKKEI プラス1」第T面では、毎週様々なもののランキングが発表されます。先週土曜日(2月9日)は「伝統工芸、訪ねて触れる」のランキングで、「金閣寺や東照宮を彩った輝き」として金沢箔が堂々の第1位でした。上京する時、金粉をよくお土産としていることもあり、ランキングを見た時は非常にうれしかったです。

しかし、すぐに、金沢は、歴史と伝統のある古都という位置づけだけで良いのだろうかと思い始めました。2011年10月27日付け本欄「『こころ』父親の嘆き」の内容が頭に浮かびました。県外の大学に進学した優秀な学生がなかなか地元に戻って来ないことについて述べたものです。

今年に入ったある日曜日に、元生徒さんとランチを共にしました。彼は、公立トップ校から東京の大学へ進学し、感心な事に地元に戻り、先生をしています。いろいろな話をしましたが、彼の高校同級生の就職先について聞いてみました。石川県に戻っているかどうかです。答えは予想通りで、ほとんど大都市圏で就職したそうです。理由は簡単で、県外の有名大学に進学した学生にとって魅力的な会社が金沢、石川にはないからです。

地元で頑張っている会社には大変失礼な話ですが、それが実態です。歴史、文化、伝統は、金沢そして石川の大切な財産であり、大きな魅力です。しかし、金沢が、古都という一言で評されるのは非常に悲しいです。それは、当地の1側面でしかないはずです。優秀な学生に戻ってきたいと思わせるような企業が数多くあって初めて、石川が発展して、本当の意味で地方の時代が到来するでしょう。

父親に「子供に学問をさせるのも、好し悪しだね。折角修行をざせると、その子供は決して宅(うち)へ帰って来ない。これじゃ手もなく親子を隔離するために学問させるようなものだ」と嘆かせないように地元経済を発展させ、そこに伝統、文化が組み合わされると、きらきら輝くような金沢、石川になると思います。

(2013年02月07日) 【日本人の英語能力 その2】[▲ 先頭へ]
本年1月10日付け本欄「やはり英語力」で、「英語力の向上が必要だ」というソフトバンク孫社長の言葉を受けて、現在の英語教育について考えてみたいと書きました。そこで、今までにどのようなことを述べたかを調べるために過去の本欄をチェックしました。すると、2002年7月18日付け本欄「日本人の英語能力」で次のように述べていました。

『文部科学省が日本人の英語能力を底上げするための「英語が使える日本人の育成のための戦略構想」を表明しました。中学・高校の英語教員はTOEIC730点を目標とし、2006年度入学の大学入試センター試験にはリスニングテストが導入される見込みです。

日本人は中学から英語を勉強し始めて、高校・大学を通して10年間英語を学びます。しかし、大学を卒業した時点で英語を仕事で使える人はあまりいません。読み書きはできても英会話ができるとなると非常に稀と言えます。私自身の経験でも、英会話が自由にできるようになったのは、仕事で英語を使うようになってからでした。頭の中で日本文を英語に訳して話していましたが、海外取引先との価格交渉をしているうちに突如頭の中の翻訳なしに英語が話せるようになりました。その時の海外出張では英語で夢を見ました。

何故大学卒業時に英語が使えないかは、そういう教育がされていないからです。日本人は文法を中心に勉強しているから英語が話せないという指摘は間違っていると思います。日本人が英語を話せないのは、話すような教育がされていないからです。例えば、中学の英語教科書には英語の発音についての記述が乗っていますが、その部分を生徒に教えている先生は皆無に近いようです。また、現在の大学入試センター試験にも英単語のアクセント問題や発音問題は出題されますが、高校の授業の中で英単語の発音・アクセントは軽視されています。中学や高校にはALTの先生が行きますが、単なるお遊びの域を出ていないようで、生徒達はあまり期待していないのが現状です。

英語の先生の目標をTOEIC730点にすることは良いことですが、それでもまだ足りません。それはTOEICや英検では、文法、英語を読む能力、リスニング能力は測定できますが、英語を書く能力と話す能力はカバーしていないからです。文部科学省の構想は、「中学、高校卒業段階では英会話ができる」「大学卒業段階では仕事で英語が使える」ことを目標にしていますが、その実現のためには先生の資質、教育方法の問題など多くの課題があります。しかし、この課題は貿易立国の日本、グローバル化時代の日本として避けては通れない道です。』

10年以上前に書いた上記の文を読んで愕然としてしまいました。当時と今の私の意見は全く同じです。すなわち、この10年間で日本の英語教育は全く進歩していません。確かに、2006年度入学の大学入試センター試験からリスニングテストが導入されました。しかし、中学・高校の英語教員のTOEIC730点という目標はどうなったのでしょうか。

「英語が使える日本人のための戦略構想」というお題目は素晴らしいですし、「中学、高校卒業段階では英会話ができる」「大学卒業段階では仕事で英語が使える」という文部科学省の目標は至極正しいです。しかし、具体的な仕組みが全く実現できていません。不言実行ではなく有言不実行の文部科学省には期待できないので、孫社長は、英語力向上のための1つの方策としてTOEIC報奨金を制度化したのでしょう。

10年前、文部科学省が目標とした点について、今後、具体的に考えてみたいと思っています。

(2013年01月31日) 【TOEICスコアで報奨金】[▲ 先頭へ]
本欄1月10日付け「やはり英語力」で、昨年末の日経新聞に掲載されたソフトバンク・孫正義社長のインタビュー記事を紹介致しました。孫さんは、国際競争力を高めるための人材育成について「国際ビジネスの共通言語である英語力の向上が必要だ。」と述べていました。

「ソフトバンク TOEIC 900点で100万円」、これは、本年1月11日の日経新聞、しかも1面に掲載された記事の見出しです。上記「一言」の翌日でしたからビックリしました。990点満点のTOEICで、900点以上で100万円、800点以上で30万円の一時金を一律支給する制度です。TOEICでは、860点以上がレベルA「Non-Nativeとして十分なコミュニケーションができる。」、730-855点がレベルB「どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている。」とされています。

私は、レベルAに至った後、やはり900点超えは魅力的で、3回程挑戦して失敗しました。そこで、真剣にリスニングを鍛え、文法をしっかり見直してようやくクリアしました。900点以上で100万円の報奨金の持つ意義は良く分かります。30万円の基準を、レベルBの730点ではなく800点にしたことについても理解できます。この800点は、海外ビジネスを遂行するに当って、大きな支障がない水準だと思います。今はどうであるかは明確ではありませんが、日産自動車の輸出部門にいた時は、TOEIC 750点以上が1つの目標とされていました。

今週火曜日(1月29日)の北國新聞によると、高岡市にある化学品専門商社の金森産業が、ソフトバンクと全く同じ報奨金を支給するそうです。この会社はベトナムや香港に現地法人を設置して海外事業の強化を図っているとのこと。金森産業の経営者の方は、きっと1月11日の日経新聞1面の記事に触発されたのでしょう。

高校クラスの皆さんには、この日経新聞の記事を紹介しました。さすがに皆さん、興味を持ちます。高校生の勉強とTOEICは無関係ではありません。大学入試センター試験の勉強はTOEIC対策につながります。文法・語法の力はそのまま活用できます。速読力もTOEICの読解問題には絶対的に必要です。センター試験・第4問は、TOEICの読解問題と同じような問題形式です。(ただし、リスニングについては、センター試験では英文が2回流れますが、TOEICでは1回しか流れないので、かなりのレベルの差があります。)

高校クラス(英語)では、センター試験、2次試験の両方を目標にした勉強をしています。彼らが、将来、100万円の報奨金がもらえるように、徹底的に鍛えようと考えています。火曜日の高1クラスでは、皆さん、頑張ると話していました。

(2013年01月24日) 【センター試験の仕返し】[▲ 先頭へ]
「自分の夢まで、自己採点しないでください。」 高3の皆さんは、土曜日・日曜日に行われたセンター試験の結果を月曜日(1月21日)に自己採点しました。この言葉は、月曜日の日経新聞(おそらく全国紙全て)に載った河合塾の全面広告のキャッチコピーです。白いキャンバスのような紙面の中央に、あまり大きくない字で縦に書かれていて、かなりインパクトのある紙面でした。

一瞬、面白いコピーだと思ったのですが、この言葉が意味するものを考え込んでしまいました。多分、センター試験で多少失敗しても、自分の夢をあきらめないで欲しいというメッセージでしょう。センター試験では失敗する人が多いということを前提としているようで、見方によっては非常に現実的なコピーです。

過去14年間の経験から言うと、センター試験で思い通りに得点できた人は一握りしかいません。ほとんどの人が期待する得点に至らず、2次出願大学の再考を迫られました。これは、当ゼミだけではなく、一般的な傾向だと思います。英語、数学、国語は時間との戦いという側面もあり、ちょっとした判断ミスや計算ミスが大きな減点につながります。それほどセンター試験での好成績は難しいものです。

元生徒さんから聞いた話です。月曜日の自己採点が終わった後の授業中に、教科書を見ているふりをしながら、目から光るものをポロポロ零していた成績優秀者がいたそうです。その人は、試験前、センターなんか簡単だからと、センター試験を軽視していたそうです。

一般的に言うと、センター試験は2次試験より難しくはありません。また、難関大学はセンター試験より2次試験の配点比率が高い傾向があります。従って、2次試験を重視することは理解できます。しかし、上述のように大学入試の第一関門を難なく乗り切ることは容易ではありません。然るべき準備をしなければ、センター試験は強烈なパンチを浴びせます。優しい顔をしているが、侮辱されると復讐をするタイプと言えるでしょうか。

(2013年01月17日) 【合格するのは、いつものキミだ。】[▲ 先頭へ]
「合格するのは、いつものキミだ。」本日付けの日経新聞(おそらく全国紙全て)に載っていた河合塾の広告のキャッチコピーです。とても良い言葉だと思います。受験生に「平常心で頑張れ」と言えば、緊張感が一層高まってしまうかもしれませんが、「いつものキミ」と言われれば楽な気持ちで試験に臨めそうです。

大学入試センター試験が週末(1月19日・20日)に迫っています。私がジタバタしても仕方がないのですが、やはり気持ちは落ち着きません。生徒の皆さんもこの一カ月位、昨年の秋頃までとは違う複雑な表情を浮かべていました。受験を間近にした重苦しさの中で、弱気になりがちな自分と闘っているという雰囲気でした。

その昔、私の浪人時代、受験が近づいてきた頃に河合塾の先生から頂いた手紙を今でも大切にしまっています。変色したその手紙の一節に次の言葉が書かれています。「最大の敵は自己自身である。感情的自己と理性的自己との戦いである。健康を害したり不安感に陥ったりしないように理性によって自己を導いていかなければならない。この苦しさに負けない自己をつくりあげる努力の過程こそが君の未来の糧となるのだ。」高3の皆さんには、先月、この言葉を紹介しました。

日経新聞のコラム「春秋」(1日13日付け)で次の話が紹介されていました。附属高校からエスカレーター式に大学に入った学生は、就職活動で不利になる場合があるそうです。大学受験をくぐり抜けておらず学力や精神力が鍛えられていないから、附属校あがりはお断りという会社が実際にあるとのこと。大学受験を乗り越えて逞しくなった元生徒さんは多数います。やはり、受験を通して人間が鍛えられるのだと思います。

センター試験前の最後の授業で高3の皆さんに話した言葉は、月並みですが、「人事を尽くして天命を待つ」です。この段階ではこれしかありません。私は、試験初日の土曜日の朝、白山比盗_社で皆さんの健闘を祈るつもりです。

(2013年01月10日) 【やはり英語力】[▲ 先頭へ]
昨年末、日経新聞に「2013展望」というシリーズのインタビュー記事がありました。12月30日付けの同記事にはソフトバンク社長の孫正義さんが登場しました。ダイナミックにビジネスを展開している孫さんならではの言葉が並んでいて、記事に引き込まれました。私が思わず赤線を引いた孫社長の言葉は次の通りです。

・米国進出後は日米を「我が国」と定義し市場を増やしていく。内需が縮小する日本に引きこもることこそがリスクだ。
・特定の国や業種に偏っていては世界的な競争に敗れ、買収されるリスクも高まる。
・(数々の構造問題について)経営者が言い訳を口にした途端に負けを認めることになる。
・経営者の最も重要な仕事はドメイン(事業領域)を常に再定義することだ。
・滅私奉公の日本企業の風土の中から本当の競争は生まれない。

海外ビジネスを展開する経営者にとって大変参考になり、耳の痛い言葉だと思います。孫社長は、国際競争力を高めるための人材育成について、「まず国際ビジネスの共通言語である英語力の向上が必要だ。」「英語力の高い社員の給料を増やすなど、動機づけをしてグローバル人材を育てていきたい。」と述べています。

国際ビジネスを展開するに当たって英語の必要性は当たり前のことです。グローバルに事業が展開され、情報が行き交う現在において、孫社長をして「英語力の向上が必要だ」と言わせしめる日本の英語教育とは何なのかと思わざるを得ませんでした。次回以降、現在の英語教育について考えてみるつもりです。

(2013年01月03日) 【人を残す その3】[▲ 先頭へ]
新年あけましておめでとうございます。

昨年末、東京の大学に進学した元生徒さんが帰省した際にランチしました。大学での勉強、東京での生活、将来の方向性等いろいろな話をしました。人生観に関する話も出ました。中学や高校の時に一緒に勉強した元生徒さんと、このような大人と大人の話ができることは大きな喜びです。

2009年12月31日付け本欄で紹介しました、プロ野球楽天・野村前監督の言葉「人間何を残すか。人を残すのが一番」はずっと心に残っています。学習塾の分際で偉そうなことは言えず、人を残すというレベルには到底至りませんが、中高生の皆さんや、大学生、社会人になった皆さんが人間として成長するための刺激やアドバイスは提供し続けたいと考えています。もちろん英語や数学の授業が優先で、お正月なので大胆に、どこにも負けない日本一の分かり易さを追求します!

現生徒や元生徒の皆さんに何らかの影響を及ぼすのですから、自分自身を律しなければなりません。私にとって生涯のテーマである「謙虚さ」を忘れずに、必要な勉強をして、世の中の動きをウォッチするつもりです。本年も一生懸命頑張ります。どうぞよろしくお願い致します。