■ 過去の『一言』(2001〜2023)
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(2020年1月 〜 2020年6月)


(2020年 6月25日) 【英語の共通テスト】 [▲ 先頭へ]

今月に入り各高校の授業が再開され、3年生はセンター試験から替わる共通テスト形式のマーク式模試を受けました。毎年、6月初旬の総体・総文の翌週にマーク式模試が行われるので、ほぼ例年通りに実施されたことになります。

センター試験の英語は、第1問が発音・アクセント、第2問が文法・語法・語句整序・対話文完成の問題でしたが、共通テストでは第1問から第6問の全てが読解問題になります。試験時間は同じ80分です。全てが読解問題になったので英語の総語数が1,000語増えて約5,300語になりました。事実(fact)と意見(opinion)を区別して答える問題や複数の選択肢が正解になる問題もあります。特に、複数の選択肢を選ぶ問題は解きづらく、全体的に難度が上がったと思います。因みに、2018年11月に実施された試行調査の平均点は51.25点(満点100点)でした。

センター試験の第4問(グラフ・英文資料)、第5問(小説)、第6問(論説)のような問題に加えて、新聞記事、ブログ、伝記などの問題が並んでいます。第1問から第6問の中に約5,300語で10種類の英文の問題がありますから、80分で解くのは本当に大変です。高3クラスの皆さんに模試の感想を聞いたところ、時間が足りなかったとのことでした。予想通りの感想でした。上述の共通テスト形式の試行調査の問題を今年2月の授業で3回に分けて解いていましたが、皆さんは英語のボリュームに圧倒されたようです。途中で英文を見るのが嫌になったという感想もありました。

実は、共通テストに対応する授業内容について心配していました。センター試験の形式とは異なる新しい種類の問題が手元になかったからです。しかし、最近になって十分な量が確保できました。サミット・ゼミ高3英語クラスでは共通テスト対策と2次試験対策の授業を交互に実施しています。これから来年1月の本番までの共通テスト対策の授業をどのように進めるかが明確になりました。高3クラスの皆さんが不安なく自信を持って共通テストに臨めるように導いていきます。


(2020年 6月18日) 【あるベストセラー】 [▲ 先頭へ]

先週木曜日(6/11)の日本経済新聞朝刊に掲載された広告を見てある本を買いました。ベストセラーになっている「還暦からの底力」という本で、翌日の北國新聞朝刊にも広告が出ていました。著者は立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんで、定年を迎える世代への応援歌のような本です。

出口さんは京都大学法学部を卒業後、日本生命に入社し、58歳の時に同社を退職してライフネット生命保険を創業しました。そして2018年1月、69歳で立命館アジア太平洋大学の第四代学長に就任しました。その本の冒頭では、60歳を超えてからインドへの長旅をした4世紀の中国の僧、法顕(ほっけん)やマレーシアのマハティール前首相という還暦を超えてもパワフルに活躍している人が紹介されていました。出口さん自身も同様です。

本の中に、「大事なことは何が起こっても自分の頭で物事を根底から考え、自分の言葉で意見をいえる能力なのです。」という記述がありました。また、教育の2つの目的として、「社会に出て必要となる基礎的な知識即ち、生きるための武器を身に付けること」と「考える力を身に付けること」を挙げています。

私は、2002年にノーベル物理学賞を受賞した東京大学特別栄誉教授の小柴昌俊先生の「様々な知識と考える力の掛け算で人間の総合的な能力が決まる」という言葉を基本として授業を行っています。また、高校入試で出題される国語の作文や大学入試で出題される自由英作文の練習で表現力を鍛えています。上述の出口さんの言葉は中高生の皆さんと接する時の私の基本的考え方と全く同じなので、お墨付きを頂いたように感じました。

強く印象に残ったのは「次の世代のために、自分のできることに取り組む」という言葉です。人間は何のために生きるのか、という問いに対する答えは、次の世代のために生きているに決まっていると断定しています。なるほどと思いました。スケールは小さいものの、現在行っている中高生の皆さんを導くことは、次の世代のために正に私ができることです。出口さんから、今のままで頑張りなさいとエールを受けた感じです。


(2020年 6月11日) 【中3クラスの進行状況】 [▲ 先頭へ]

中学、高校とも授業が今月から再開されました。生徒の皆さんには、生活リズムを早く取り戻そうと話しています。

毎年、各中学では5月末に1学期中間テストが行われ、6月の初旬の今頃に1、2年生範囲の実力テストが行われます。今年は新型コロナウイルス感染予防の休校のために日程が大幅に異なっています。中3生は休校期間中に宿題形式で1、2年の復習をしていましたので、学校が再開された後は実力テストが行われています。そして、先週始まった3年生の勉強に対する定期テストは来月に入ってから行われます。

当ゼミ中3クラスは学校の定期テスト・実力テストに合わせた授業を行っています。例年であれば中間テスト範囲の復習の授業は先月中に終えているはずですが、今年はそれが今月後半以降にずれることになります。しかし、その分1、2年の復習の勉強が早く進みました。例年の1学期・期末テスト範囲の復習が夏休み以降に移りますが、夏期講習の内容を工夫することで十分に調整可能です。

先月25日の石川県教育委員会の会議で来年の公立高校入試は3月9日・10日と決定しました。新年度の授業開始が約2ヶ月遅れたにもかかわらず入試日程が例年通りですから、中3生の皆さんやご父兄の皆さんは心配していると思います。

中3クラスの授業の進行は例年と少し異なるものの、一年間全体でこなすべき勉強量には全く変化ありませんから、何の問題もなく入試に対応できます。この点をしっかり説明して、生徒やご父兄の皆さんの不安を取り除きたいと考えています。もし学校の授業の進行が遅いようであれば、普段は実施しない学校の教科書の予習もやるつもりです。勉強面でもメンタルサポート面でも万全を期します。


(2020年 6月 4日) 【総合問題対策】 [▲ 先頭へ]

2週連続で来年の金沢大学2次試験改革についてご紹介しました。受験生の中には人文学類や国際学類で採用される総合問題のことを心配している人がいると思います。総合問題は後期日程の文系一括入試で課されていましたから、その問題が参考になります。

昨年の総合問題は3問でした。第1問は性的マイノリティの子どもに関する漫画、論説文や資料を踏まえて700字以内で自分の意見を述べる問題、第2問は障害者総合支援法に関して300字以内と150字以内で述べる問題、第3問はトヨタ自動車のものづくりの基本的原理に関する英文資料について450字以内でまとめる問題でした。

受験生にとっては厳しい問題です。各資料をしっかり理解した上で自分の意見を考えなければなりません。700字で述べる場合は全体の構成にも注意する必要があります。正に思考力と表現力が問われています。基本的には小論文と同じような対策が必要です。小論文は2次試験・後期日程で課される場合がよくありますが、高校の通常の授業で小論文対策がなされることはほとんどなく、前期日程試験後に集中的に対策されるのが実状だと思います。小論文や総合問題は受験生にとって悩ましい課題です。

私は最近の英語の2次試験でよく出題される自由英作文への対策が活用できると考えています。自由英作文を書くためには思考力と表現力が必要だからです。例えば、金沢大学の昨年の自由英作文の問題は、日本の運転免許取得の年齢制限を18歳から16歳に引き下げることに対して、3つの理由を挙げながら80-120語で賛成か反対かを述べるものでした。説得力ある内容で上手くまとめなければなりません。このような自由英作文ができるようになれば上述のような総合問題にも十分対処できるはずです。

当ゼミの高3英語クラスでは和文英訳と自由英作文を毎週交互に練習しています。自由英作文は難しいので高2の1月から練習を始めました。書き易いテーマから始めて徐々に難度を上げています。生徒の皆さんが書いた英文はその場で添削しています。内容、英語、総合の観点から評定しますが、まだ6月初旬のこの時期ですから、皆さん満足できる出来具合には至っていません。少しずつ慣れていき、冬を迎える頃に合格答案が書けるようになれば良いと思っています。


(2020年 5月28日) 【金沢大学の入試変更 その2】 [▲ 先頭へ]

来年の金沢大学の入試では、人間社会学域の各学類の出願倍率が下がりそうです。かなり下がる学類があるかもしれません。入試が大きく変わるからです。変更点は2つで、2次試験科目の増加と総合問題の新設です。いずれも受験生にとっては厳しい内容です。

今年の人間社会学域の入試では全ての学類で2次試験科目は2科目でしたが、来年の入試では全ての学類が3科目を課します。英語、国語、数学または総合問題の3科目です。法学類は国語と英語で受験できるL方式、数学と英語で受験できるM方式はなくなり英数国で一本化されます。経済学類は英語と数学の2科目でしたが、国語を加えた3科目になります。地域創造学類は英数国の2科目選択から3科目必須になります。

総合問題は人文学類で必須科目になります。国際学類は英語と国語以外に総合問題(パターンA)か数学(パターンB)を選びます。学校教育学類では総合問題が選択科目に入ります。総合問題は後期日程の文系一括入試で採用されていました。昨年の総合問題は3問(英文が1問)から構成され、問題文や資料に関して150-700字(日本語)で答える問題が4問ありました。

文系学部の2次試験で英語と国語以外に数学か総合問題が課されることになりました。文系学部の志望者は数学を苦手とする傾向がありますから、数学が共通テストだけではなく2次試験でも課されれば受験を避ける人が増えるでしょう。総合問題がどのような内容か非常に興味があります。目安と考えられるのが昨年の総合問題です。思考力と表現力が問われる難しい問題でした。総合問題に対する準備は大変です。総合問題を課す学類の倍率はやはり下がるでしょう。

大学入試改革のポイントは思考力、判断力そして表現力でした。記述式問題の導入が見送られたことで、共通テストによる入試改革は骨抜きになりました。しかし、金沢大学は入試改革を着実に実行していると思います。先週の本欄でご紹介しました共通テストと2次試験の配点比率の見直しや上述の2次試験科目追加という改革からは思考力、表現力重視の姿勢を感じることができます。来年の受験生がどのように反応するかが注目されます。


(2020年 5月21日) 【金沢大学の入試変更 その1】 [▲ 先頭へ]

来年の金沢大学の入試が変わるという話を小耳にはさみ、同大学のホームページで入試変更点を詳しく調べてみました。特に文系学部の入試が変わります。大きな変更と言っても良いかもしれません。

従来、金沢大学の文系学部(人間社会学域)の入試はセンター勝負と言われてきました。センター試験(来年から共通テスト)の配点が2次試験の配点より大きくて、センター試験が上手くいけば合格の可能性大でした。典型例が地域創造学類で、センター試験950点、2次試験400点でした。合計点におけるセンター試験の配点は70.4%です。人文学類は62.5%、法学類・経済学類は61.3%、国際学類は60%でした。来年入試では文系の全ての学類で共通テストより2次試験の配点が大きくなります。学類によって合計点は違いますが、全ての学類で共通テスト40%、2次試験60%の配点になります。

理系学部(理工学域)は文系とは異なって、2次試験の配点がセンター試験と同じかそれ以上でした。2次試験の配点比率が最も高かったのは機械工学類・フロンティア工学類・電子情報通信学類で、今年の配点はセンター試験40.9%、2次試験59.1%でした。来年入試では、科目毎の配点が微妙に異なりますが、全ての学類が共通テスト900点、2次試験1,350点で配点比率は人間社会学域と全く同じになります。

人間社会学域、理工学域とも2次試験の配点を高くして60%に統一したところに2次試験重視という大学側の意図がうかがえます。ただし、医学類だけ2次試験の配点は70%です。(共通テスト450点、2次試験1,050点) 医薬保健学域では薬学類が共通テスト40%、2次試験60%と他の学類と同じなので、医学類の独自性が際立っています。

一般的に難関大学ではセンター試験より2次試験の配点の方が大きい傾向があります。東大では全学部がセンター試験20%、2次試験80%でした。2次試験重視を鮮明にした金沢大学は難関大学のグループに入ったような印象があります。センター試験はマーク式で、時間との勝負という側面があり失敗し易い試験でした。共通テストもその点は変わりありません。筆記式の2次試験の配点を大きくすることは、本物の実力をつけなさいという大学側のメッセージとも受け取れます。

人間社会学域の各学類では、配点比率の変更だけではなく入試科目などの変更点が幾つかあります。大きな変更点もあります。さらに調べた上で次回の本欄でご紹介する予定です。


(2020年 5月14日) 【休校中の1つの提案】 [▲ 先頭へ]

コロナ禍の中、授業を継続しています。学習塾は石川県からの休業要請の対象ですが、床面積100u以下の場合は「適切な感染防止対策を施したうえでの営業」が認められています。少人数制の当ゼミは床面積が50uで休業要請の対象外です。教室の東西南北4方向の内3方向に窓があり、授業の前後と授業の休憩時間に窓を開けて換気しています。また教室内には空気洗浄機能付きの加湿器も設置してあります。

生徒の皆さんは生活リズムの作り方に苦労しています。授業だけではなく部活もないので一日をどう過ごすかは大きな問題です。家で家族と些細なことで口論になることもあるそうです。ステイ・ホームで皆がストレスを抱えていますから口論にもなるでしょう。自分なりにストレス解消法を工夫するように話しています。

中学クラスで雑談している時にタイプ練習を思いつきました。キーボードを見ないで打つブラインドタッチの練習です。ネットサーフィンで探したところ良いサイトがありましたので、生徒の皆さん全員に紹介しました。高3クラスで紹介することには少しためらいがありましたが、良い気分転換になると思いました。

私が社会人になり英語に関わる仕事をしたいと思った時、英文タイプの練習を始めました。英語が得意な大学時代の友人に相談したところ、タイプライターと共にタイプの教本も貸してくれました。その教本で基本練習を繰り返してすぐにブラインドで打てるようになりました。因みに、本欄の原稿を書く時はブラインドのかな入力をしています。ローマ字入力ができるようになれば、直ぐにかな入力もできるようになるものです。

生徒の皆さんの中にブラインドタッチが出来る人はいませんでした。時間がたくさんある今が良い練習時期です。決まったポジションに両手の指を置き、左手の小指で’a’を押すことから基本練習を始めます。紹介したサイトではゲーム感覚で練習できるので上達は早いと思います。生徒の皆さんがこの休校期間中にブラインドタッチをマスターすることができれば、災い転じて福となすの一例になるでしょう。


(2020年 5月 7日) 【勉強の基本について】 [▲ 先頭へ]

先週、高1クラスが開講しました。中3クラスで一緒に勉強した3名と新規に加わった1名の4名でのスタートになりました。先週の最初の授業では、4名のやる気だけではなく高1クラスの授業への期待も感じました。授業は英語です。3年後の大学入試の時点で、大学入試を突破するだけではなく、社会に出て通用する英語力を身につけるよう導いていきます。数学の授業は高2秋頃に開始する予定です。

開講に当たり幾つかの話をしました。大学入試の仕組み、文系・理系の選択、英語の重要性を説明すると共に勉強に対する基本的な姿勢について確認しました。それは、学校の授業をしっかり聞いて試験前はきちんと勉強することです。学生として当たり前のことですが、この当たり前のことを実行するのは簡単ではありません。

今年、金沢大学に感動的な合格を果たしたAさんは、「受験勉強に関するアンケート」の受験勉強で悔いが残るものとして、定期テストの時点で分からない個所をつぶさずに放っておいたことを挙げました。受験期に勉強し直さなければならなかったことが大変だったそうで、習ったその日に復習し、最低でも定期テストまでに自分のものにしなければ後から本当に後悔すると述べています。

高3クラスのB君は昨年秋頃から成績が伸びてきました。ゼミの授業でも問題の正答率が高くなっています。ずっと定期テストを大切にするように話してきましたが、十分とは言えませんでした。模試の成績が良くなってやる気が出てきたと言うB君は、高1から高2にかけての定期テストでもっと頑張れば良かったと後悔しています。

学校の授業をしっかり聞いて試験前にきちんと勉強すれば必ず学力は伸びます。スポーツや芸術で活躍するためには特別な才能が必要だと思いますが、学校の勉強においては真面目に努力を継続することが才能です。


(2020年 4月30日) 【9月入学】 [▲ 先頭へ]

学校の9月入学がにわかに話題に上ってきました。昨日開かれた全国知事会を前にして月曜日(4/27)に宮城県の村井知事が提案したことが1つのきっかけになったようです。昨日の衆議院予算委員会では、国民民主党の玉木代表の質問に対して安倍総理大臣は「前広に様々な選択肢を検討していきたい」と述べました。萩生田文部科学大臣は火曜日の記者会見で「我が国の社会全体の問題として広く国民の間で認識が共有できるのであれば、大きな選択肢の1つだ」と述べています。

秋入学はかつて大きな議論を呼びました。2011年7月に東京大学の浜田純一学長が「2015年までの全面移行を目指す」と発表したことがきっかけでした。世界標準になっている9月入学に合わせることで、留学生、研究者や教授の日本と海外との行き来の障壁をなくすことが狙いでした。幾つかの大学が賛同しましたが、結局は実現せず、最近はほとんど議論されていませんでした。

秋入学のメリットとしては、入試の時期が変わることが大きいと考えます。現在の入試は冬に行われるので、天気の影響は小さくありません。インフルエンザが流行る時期でもあります。1月中旬のセンター試験(来年から共通テスト)が雪の影響を受ければ、受験生の得点にも影響を及ぼす可能性があります。9月入学にすれば共通テストは6月中旬になりますから、悪天候によって受験生が不利益を被ることはなくなります。

もちろん数多くのデメリットもあります。国や自治体の会計年度とのズレが生じますから様々な法令の改正が必要になります。就職や国家試験の時期を変更しなければなりません。今年から実行するのであれば4月から8月までの各校の経費負担も問題になります。部活動の大会の開催時期も見直す必要があります。

調べてみると、日本の大学は欧米をモデルにしていたので明治から大正までは秋入学でした。しかし、国の会計年度に合わせるために1921年から現在の春入学に変わりました。スペイン風邪が全世界で流行した頃(1918-1920年)でした。9月入学は日本社会の大きな変化であり、実現は容易ではありません。スペイン風邪から100年後の今回の新型コロナウイルスによるパンデミックが9月入学という大きな変化を実現させるのでしょうか。


(2020年 4月23日) 【異常な平均点】 [▲ 先頭へ]

今週月曜日(4/20)に石川県教育委員会の会議で今年3月の公立高校入試の平均点が報告され、翌日、新聞報道されました。5教科合計の平均点は228点(昨年266点)でした。科目別では、英語45.3点(48.7点)、数学40.0点(49.6点)、国語50.5点(54.5点)、理科48.1点(55.6点)、社会43.9点(57.9点)です。

5教科合計の平均点は6年前、7年前の239点が衝撃的な低さでした。今年の228点は異次元の低さという感じです。私の手元には過去24年分のデータがありますが、合計点、英語、数学、社会はその中の最低点です。国語は13年前の50.4点に次ぐ低さです。今月2日の本欄「公立高校入試 in 2020」で、英語は50点を下回りそうと述べましたが、私の予想の下限の低さでした。数学は50点を確実に下回りそうと述べましたが、予想を大きく下回りました。

英語と数学の問題を見直してみました。英語は、英文ポスターに関する6人の会話文や英文グラフに関する長文問題が複雑で読み取りづらく、解くのに時間を要したことが低い平均点の原因だと思われます。第1問のリスニングの時間は不明ですが、もし15分近くかかったとすれば、焦って第2問以降の英文を読むことになり低得点を招きます。

数学は、問題を解く上で気をつけるべきポイントがある問題が多くて全体的に難しかったのですが、平均点40.0点は納得できない低さです。異常な低さになった原因は第2問の確率の問題かもしれません。落ち着いて考えなければ解けない問題で、ここで考え込んで時間を使ってしまいパニックに陥った受験生が多かったのではないでしょうか。確率の次の2次関数の問題が難しかったことが低得点に拍車をかけたと分析できます。

今春の入試平均点は異常な低さです。しかも、教育委員会で報告された平均点は「合格者の得点状況」ですから、受験生全体の平均点はさらに低いことになります。難しすぎる高校入試が中3生にどのような影響を与えるのでしょうか。今年の228点は途方もなく大きなプレッシャーになると思います。中3生がかわいそうです。入試平均点は教育委員会に報告されただけで、議論はされなかったのでしょうか。今年の228点はきちんと分析されて何らかの対策が必要なデータだと思います。


(2020年 4月16日) 【先生の言葉】 [▲ 先頭へ]

先月30日(月)、NHKのドキュメンタリー番組「逆転人生」を録画しました。偏差値35の落ちこぼれの生徒が東大に合格した話でした。主人公は東大経済学部4年生の西岡壱誠さんです。西岡さんは、小さい時からいじめられっ子で「どうせ俺なんて何もできない」と思っていたそうです。しかし、担任の先生から「お前はなれませんという目に見えない線で囲まれている状態だ」と指摘され、「東大を目指せ! そして自分を変えろ!」と激励されて、本当に東大を目指して勉強し始めました。そして、二浪の上合格しました。

録画した番組を見た頃にある郵便が届きました。今年3月12日付け本欄「挑戦そして感動」でご紹介したAさんにお願いした「受験勉強に関するアンケート」結果でした。アンケート項目の中に「受験勉強で辛かった時期はいつ頃で、辛かった事は何でしたか。それをどのように乗り越えましたか。」という質問があります。彼女はセンター試験で期待通りに得点できず人生で一番落ち込みました。合格が有望な大学ではなくD判定の金沢大学に挑戦した背景には二つの言葉があったそうです。一つは「金沢大学の2次試験で戦える実力はあると思う。」という私の言葉と、もう一つは友人の激励の言葉です。

私は忘れていましたが、Aさんが出願大学を迷っている時に電話で話した言葉とのことでした。厳しい判定だった金沢大学の受験を諦めきれないということで、過去の合格最低点を調べました。模試の成績推移や教室での問題の解き具合から総合的に判断した結果でした。アンケート結果を読むまでは、私の言葉が彼女の挑戦に大きく影響したことは知りませんでした。改めて、生徒の皆さんへの言葉の重要性を認識しました。

そう言えば、自分自身の経験もあります。生徒の皆さんへの接し方の参考にしているのは中3時の担任の先生です。その先生からの手紙で頂いた言葉は私が生きるモチベーションになっています。


(2020年 4月 9日) 【ピンチはチャンス】 [▲ 先頭へ]

一昨日(4/7)、新型コロナウイルス感染症対策のため緊急事態宣言が発令されました。対象の東京、大阪などの7都府県だけではなく、日本そして世界全体が社会、経済を揺るがす大きな危機に直面しています。今は他人を思いやりながら自分ができることをするしかないと思います。トンネルの長さはわかりませんが、必ず出口はあるはずです。

石川県教育委員会は4月8日以降に再開予定だった県立高校を今日から5月1日まで休校にすると発表しました。満開の桜の下で高校生活を始める予定だった新入生は動揺していることでしょう。上級生も先月からの休校が続くことになり、新年度のスタートが大きく乱れてしまいました。良いリズムで生活、勉強することが難しくなっています。

大変な事態に陥っていますが、冷静に考えると高3の大学受験生にとっては絶好のチャンスと言えます。学校の勉強の開始が遅れることは困りますが、本格的な受験勉強を始めるに当たって自分の課題を補強する時間を与えられたのです。高3クラスの皆さんには、春休み前に弱点分野の克服を図るように指示していましたが、その時間を長く持つことができるようになりました。

受験勉強を進めるためには基礎をしっかり固めることが非常に重要です。英語では文法・単語、数学では教科書の内容、古文・漢文では文法・単語が基礎事項になります。理科・社会の科目で大きく出遅れている人は苦手分野を復習すべきです。やるべきことはたくさんあるはずです。

突然の長い休みをどのように過ごすかは難しい問題です。どうすれば良いかと悩むような消極的な姿勢ではなく、勉強の課題を克服しようと積極的に臨めば有意義な休みになります。今後の受験勉強をスムーズに進めて来春の栄冠につなげるチャンスです。高3クラスの皆さんには、課題と克服法を整理するようにLINEで指示しました。


(2020年 4月 2日) 【公立高校入試 in 2020】 [▲ 先頭へ]

今回の一言は、少し遅れましたが、今年の公立高校入試についてです。入試は先月10日・11日に実施され、18日に合格が発表されました。今年度は5名の生徒さん全員が合格しました。入試問題は翌日の朝刊に掲載され、英語と数学の問題をすぐに解いてみました。

英語の問題構成と形式は昨年と同様でした。第3問は英文ポスターに関する6人による38行の会話文の問題で昨年の5人、37行より少し複雑になりました。第4問は英文グラフに関する32行の長文問題で昨年の35行より短くなりましたが、易しくはありませんでした。昨年同様、第3問では3文以上、第4問では4文以上の英作文が求められており、時間的に厳しい入試問題だったと思います。第1問のリスニングの難度はわかりませんが、今年の英語の平均点は昨年の48.7点と同様、50点を下回りそうです。

数学は昨年に比べて、関数と証明が明らかに難しくなりました。第3問の2次関数の問題はよく吟味された問題で受験生は苦労したと思います。配点が8点の作図も良問でやや難しかったです。数学の平均点は一昨年の51.7点を除いて7年前の平成25年度から50点割れが続いていますが、今年も50点を確実に下回りそうです。入試の数学は難しいです。

英語の得点安定化のための最大のポイントは速読です。速読については、昨年12月19日付け本欄「中3クラス速読強化」で述べた通り、従来より演習量を増やしました。生徒の皆さんの入試での得点からすると効果がありましたので、今年度も継続するつもりです。速読以外のポイントとして、英作、リスニングそして試験時間50分の使い方が挙げられます。

数学は、入試問題を解きながら、どの時期にどのような演習をするべきかというアイデアが浮かんできました。確実な計算力と考える力を基本にした上で各分野の解法のテクニックを伝えていくつもりです。そして数多くの問題を解けば難問にも対処できるようになります。数学はテストで失敗し易いので得点安定化のための演習も積み重ねなければなりません。

今年度もやる気のある中3生が参加して明るいクラスになっています。高校入試を目指すと共に高校で伸びるための本当の基礎作りのための授業をすることで皆さんの学力を着実に伸ばし、彼らとご父兄の皆さんの信頼に応えたいと思います。


(2020年 3月26日) 【お祝いランチ】 [▲ 先頭へ]

一昨日(3/24)、今月12日の本欄「挑戦そして感動」でご紹介したAさんとホテルランチしました。私はかなり早く着いてしまいロビーのソファーに腰かけてのんびり待っていました。すると、イマイチ特定できない若い女性がニコニコしながらこちらに向かってきました。Aさんだろうとは思ったのですが、人違いだとカッコ悪いので手も振らずほぼ無表情で見ていました。Aさんでした。髪を染め、薄化粧をしていました。先月の2次試験前の最後の授業で会った時とは大きく違っていたのでビックリしました。トラや白くまに追いかけられて食べられた夢を見ていた女子高生から大きく変身した素敵な姿でした。

そのランチにはAさんの高校の先輩も誘いました。2015年3月19日付け本欄「アゴが疲れるくらい泣いた結果」でご紹介しましたBさんです。Bさんは金沢大学・人間社会学域・国際学類で意欲的に学んできました。1年間のアメリカ留学も経験しました。今春卒業して地元の会社に就職します。Aさんの受験前にアドバイスをもらっていました。高校クラスの授業中にBさんの話をよくしたので、Aさんは親近感を持っていました。

とにかく楽しいランチでした。受験の苦労話、大学での生活、就活などいろいろなことについて話しました。私はAさんに何故、A判定やC判定の大学ではなくD判定だった金沢大学を受験したのかを尋ねました。一度は学校の先生が勧めるC判定の大学にしようと思ったものの一か月後の2次試験に向けてのモチベーションを持てなかったそうです。一緒に検討した金沢大学合格のための最低ラインを突破できると思って挑戦を決めたとのことでした。怖い夢に襲われていた心優しいAさんはチャレンジ精神を持っていました。

生徒の皆さんの成長は本当に感動的です。深い喜びを与えてくれます。Aさん、Bさん、ありがとう!


(2020年 3月19日) 【「金沢情報」2/26号 学習塾特集に関して】 [▲ 先頭へ]

「金沢情報」2/26号に新年度生募集の広告を掲載して、何件かのお問い合わせを頂きました。広告に記載した情報には限りがありますので追加情報をご案内しようと思います。サミット・ゼミのクラス設定や英語・数学の授業内容については、昨年2月21日付け本欄をご参照下さい。初めて「金沢情報」に広告を掲載するに際してまとめたものです。

今回は学習塾を運営する際の基本方針について述べたいと思います。私は中高生の皆さんに将来自ら判断できる人間、アイデアを提案できる人間になって欲しいと思っています。社会に出るとビジネスの場や研究開発の場で様々な問題、課題が発生します。それらの問題や課題に対して解決策を提案できるということです。私自身のビジネス経験を活かして社会で活躍できる人材を育てたいと思っています。

アイデアを提案するためのベースが思考力、判断力、表現力です。これらは大学入試改革で求められている能力ですが、今まで軽視されてきたわけではありません。大学入試の2次試験の問題は思考力、表現力なくして解くことはできません。入試改革は1次試験(センター試験、来年から共通テスト)を対象にしていたので世間が誤解することになったのだと思います。父兄の皆さんには「入試改革」という言葉に煽られることなく冷静に対処して欲しいです。本当にやるべきことは従来通りです。

思考力、判断力、表現力を鍛えるということは結局、読み、書き、ソロバンを万全にすることです。学力の基本はいつの時代でも同じです。しかし、これだけでは不十分です。やはり様々な知識が必要です。暗記偏重と言われますが、暗記は学力のイロハです。そして、知識と考える力の掛け算で人間の総合的能力が決まるという小柴昌俊東大名誉教授の指摘が説得力を持って迫ってきます。知識と考える力の掛け算から独創力、アイデアが生まれるのです。

以上をまとめると、社会に出た時に直面する問題や課題に解決策を提案できるように、高校入試や大学入試を目標にしながら、知識を蓄え、思考力・表現力を磨くということになります。キーワードは、よく言われている思考力・判断力・表現力ではなく、知識・思考力・表現力だと考えます。

それでは知識を蓄え、思考力・表現力を磨くためにどうするべきかと言えば、学校の授業をしっかり聞いて、試験前はきっちり試験範囲を勉強することが重要です。これが勉強の基本です。高校入試、大学入試での受験勉強とは各学年の定期テストの集合体であることを忘れてはいけません。思考力や表現力を鍛える点においては指導者の意識、役割がとても大きいと思います。

最後にサミット・ゼミで自信を持って言えることを3点具体的に述べさせて頂きます。自らアピールすることは謙虚さに欠けますがお許し下さい。
1.高校入試の段階で英文速読力がつきます。3年後の大学入試共通テストにつながります。
2.英語の大学入試2次試験で出題される自由英作文対策は万全です。授業中に添削します。
3.数学の問題演習では自ら考えるように導いて思考力を鍛えます。


(2020年 3月12日) 【挑戦そして感動】 [▲ 先頭へ]

先週土曜日(3/7)14:00に金沢大学・前期日程試験の合格が発表されました。14:02に吉報のLINEメッセージが届き、直後に電話が入りました。うれしい連絡をくれたのは、今年1月16日付け本欄「祈る気持ち」でご紹介したAさんです。夢の中でトラや白くまに追いかけられ食べられてしまった生徒さんです。(因みに、食べられた時は痛かったそうです???)

実はAさんは3年前の公立高校入試で残念な結果に終わりました。高校入試で悔しい思いをした生徒さんには是非とも大学入試で3年前の自分にリベンジして欲しいと思っています。これは自分の人生に立ち向かう姿勢に影響するからです。Aさんにもそれを期待していました。そしてAさんは厳しい私に頑張ってついてきてくれました。

Aさんは金沢大学よりも難関の県外の大学を目指しました。合格に手が届く水準まで成績も伸びてきました。しかし、センター試験で期待したほどは得点できませんでした。センター試験直後の水曜日に大手予備校の合格判定システムが利用可能になりますが、その水曜日夕方、使い易い河合塾のシステムについて説明しようと電話しました。電話で話しかけたところ様子が変でした。泣いていました。志望していた難関大学は無理で、金沢大学も非常に厳しい状況だったからです。

Aさん自身、高校の先生そして私がいろいろ検討した結果、出願候補の大学が3つに絞られました。富山大学、信州大学、金沢大学です。合格判定は、それぞれA(80%以上)、C(50%)、D(35%)でした。彼女には、センター試験ではちょっと失敗したものの受験勉強で頑張ってきたので立派な選択肢の中から選べるんだよと話しました。高校の先生は信州大学をすすめたそうです。私は、どの選択肢も現実的であり、自分で判断するように指示しました。

金沢大学の場合、去年や一昨年の合格最低点を基準にすると入試で67%程度の得点率が必要でした。不可能ではありませんが易しい水準ではありません。3年前に苦い経験があります。今年の初夢で学校の良い先生に石を投げつけられる夢を見たほど苦しい思いをしてきたAさんですから金沢大学は選ばないだろうと思っていました。

しかし、彼女は金沢大学を選びました。正に1点を争う挑戦でした。失敗を恐れない果敢な選択に私は敬意を表し、可能な限りのサポートをしました。この間、第一志望の私立大学に合格して、今春の大学入試での大きな課題であった3年前の自分へのリベンジは果たしました。一ヶ月間、懸命に対策した上で入試に臨み、そして合格発表を待ちました。

センター試験後の電話で泣いていたAさんがどのような思いで出願大学を金沢大学に決めたか、どれだけ頑張って2月25日の入試を迎えたかを思うと涙が溢れるばかりです。


(2020年 3月 5日) 【金沢大学・英語入試問題 in 2020】 [▲ 先頭へ]

今年も金沢大学の英語の問題を解いてみました。2/25の2次試験の問題は翌日の地元紙に掲載されます。新聞に掲載された問題は文字が小さいので解きづらいのですが、解いた感覚を早く自分自身で掴みたいので紙面を折り曲げながら問題に取り組みました。

金沢大学の問題は4年前に大きく問題傾向が変わりました。2015年までは日本語の設問の指示に対して日本語で答える問題でした。2016年からは設問の指示と答えの両方が英語に変わると共に英文和訳の問題がなくなりました。今年の問題もこの傾向を受け継ぎました。第1問と第2問はいわゆる英文読解問題、第3問は自由英作文の構成は昨年と同じで、試験時間は90分です。

今年の変更点は2つです。先ず、問題文の最後に英文中の単語の注がつきました。単語の注は昨年まではありませんでしたが、今年は8個(第1問)と13個(第2問)ありました。語注が多いので英文を読み取るのに時間がかかり、この分入試問題としての難度が上がったかもしれません。次に、各設問に答える際の英単語数が15語以下(第1問)、25語以下(第2問)と指定されました。しかし、正しく答える場合この制限は気にならないはずです。

注目していた自由英作文のテーマは大学1年生が大学寮で共同生活することでした。3つの理由を挙げながら80-120語の英語で自分の意見を述べる問題でした。昨年の運転免許の取得年齢の引下げに関する問題よりは書き易くなったと思います。

解き終えた時の私の感想は、時間が厳しいということと英作力が問われるということの2つです。問題文自体が長く、上述のように難しい単語の注がついたので問題文を読むのに時間がかかります。設問に答える際に問題文を読み返すとどんどん時間が経ってしまいます。2つの長文読解問題の小問3は英単語25-35語で自分の意見を述べる英作文でした。第3問の自由英作文と併せ、テーマに対する思考力と英語での表現力がポイントになります。受験生の力の差が明確に表れると思いました。

過去3年間の英語の問題は完璧に分析してあります。今年の問題を解いた経験を併せて来年以降金沢大学を受験する生徒の皆さんの参考にします。


(2020年 2月27日) 【出願倍率 in 2020】 [▲ 先頭へ]

公立高校一般入試の出願が一昨日(2/25)締め切られて、各校の倍率が夕方のテレビそして昨日の朝刊で報道されました。出願倍率は受験生の皆さんの心理に大きく影響しますから、毎年ドキドキして報道を待ちます。上位校では泉丘1.22倍、二水1.22倍、桜丘1.68倍でした。桜丘の1.68倍は平年並みでしたが、泉丘と二水の倍率には驚きがありました。

今年1/12の石川県総合模試では、泉丘(普通科)の基準偏差値(合格可能性80%)は68で二水は61でした。以前は3〜4だった両校の基準偏差値の差は大きくなっています。これはここ数年の傾向で、難関大学の合格実績で上回る泉丘の人気が続いています。この流れを受けて昨年の同校の倍率は1.33倍でした。模試データから今年も泉丘の人気化を予想していましたが1.22倍という意外な低さでした。同校では5年前に1.35倍という高倍率があり、その翌年は1.18倍に急落しました。この現象が今年も見られました。

過去数年間は1.3倍前後であった二水の出願倍率が低くなったことも意外でした。泉丘の人気化から志望校を二水に変える中3生が増えると見込まれていたからです。昨年の1.29倍を下回ることはないと思っていましたが1.22倍は驚きの低さです。泉丘が0.11倍下がり、二水も0.07倍下がりました。これは泉丘の基準偏差値が高かった模試データからは説明がつきません。それほど受験生心理が微妙ということなのでしょう。

倍率は明日(2/28)から3/3までの志願変更期間を経て確定します。志願変更する受験生は毎年4%ほどで倍率はあまり変わりません。今年は二水の倍率が上がりそうですが、どうなるでしょうか。


(2020年 2月20日) 【必要な入試改革とは その2】 [▲ 先頭へ]

前回の本欄では大学入学共通テストでの記述式問題導入見送りについて述べました。今回は入試改革のもう一つの柱である英語の民間試験について述べてみます。英語の民間試験の導入については公平性が問題になり、昨年11月1日に見送りが発表されました。民間試験導入の問題とは英語の4技能をどのように測るかという問題です。

実社会で英語を実用的に使いこなすために4技能が必要であるから大学入試で4技能を問うということは理想ですが、簡単な話ではなく実現へのハードルは限りなく高いと思います。そこには2つの問題があります。どのような試験をするかという問題と高校での英語教育の問題です。

1つ目の問題の難しさは昨年の民間試験導入を巡る議論が端的に示しました。もし本当に4技能を問うのであれば、時間をかけてでも大学入試センターが責任を持って問題を作成するべきだと思います。2つ目の問題も深刻です。高校の授業で4技能をバランス良く学ぶことは不可能に近いと思います。

現状の入試システムでは、センター試験で「読む」と「聞く」が問われ、2次試験で「読む」と「書く」が問われています。バランスが取れた良い仕組みです。この基本的仕組みの中でどのように「話す」を位置付ければ良いのでしょうか。非常に難しい問題です。

国際社会において日本企業はしっかりビジネスできているので別に入試制度を変える必要はないとも言えます。日本人はコミュニケーション能力が不足しているから「話す」をもっと鍛えなければならないという指摘には納得できますが、だからと言って直ちに大学入試の要素に入れるのは短絡的です。大学入試で「話す」を問えば高校の英語の授業に大きく影響して「読む」や「書く」能力の低下が懸念されます。

私自身は輸出の実務を通して英語でのコミュニケーションができるようになりました。その後学習塾を始めて21年間高校生に英語を教えてきました。高校生の「読む」や「書く」の能力の現実から言えば、高校側に「話す」を伸ばす授業をする余裕はありません。大学入学後、専門課程に進む前の段階でコミュニケーション能力、特に「話す」を鍛えるのが良いのではないかと考えます。

英語の4技能を大学入試でどのように測るかは本当に難しい問題です。様々な意見があるでしょう。このような状況においては何が最も重要かを考えるべきでしょう。そうなると、英語を外国語として学ぶ日本人にとって、「聞く」と「話す」より「読む」と「書く」の優先度が高いと思います。入試改革の議論は続くので、その推移を追いながら考えていくつもりです。


(2020年 2月13日) 【必要な入試改革とは】 [▲ 先頭へ]

先月、朝日新聞のインターネット広告が目に留まりました。「大学入試が変わり、脱・暗記で、思考力・判断力・表現力が重視されるようになる。新聞で、読み解く力、考える力、表現する力をつけよう。」という内容でした。確かに、それらは大学入試改革のポイントと言われています。しかし、その広告を見ていて、改めて何かおかしいと感じました。

現行の大学入試では思考力や表現力が重視されていないという指摘は全く当たりません。例えば英語の自由英作文です。昨年の金沢大学の問題は、運転免許の取得年齢を16歳以上に引き下げることの妥当性について3つの理由を挙げて80-120語の英語で述べるものでした。思考力と英語での表現力が試される難問です。2次試験の数学が易しくないことは言うまでもありません。国公立大学の2次試験は記述式で、思考力、判断力、表現力が問われているのです。

前回の本欄で述べた通り様々な知識の暗記は創造力、独創性の源泉です。広告のため誇張されているとはいえ、「脱・暗記」という表現は受験生や父兄の皆さんの誤解を招きます。当然のことながら、覚えるべきことは覚えなければなりません。

入試改革の柱の一つは共通テストでの記述式問題の導入(国語と数学)でした。しかし、採点の公平性が問題になり、昨年12月17日に導入見送りが発表されました。国公立大学入試は受験生全員が受ける1次試験のセンター試験(マーク式、来年から共通テスト)と大学毎の2次試験(記述式)から構成されます。2次試験が記述式であるのに、何故共通テストで記述式が必要であるのか根本的な疑問があります。

思考力や表現力を問う記述式の2次試験を課している各国公立大学は、ドタバタ劇を演じてきた大学入試改革を冷めた目で見ていると感じます。入試改革の主な対象が基本的学力を問う1次試験(共通テスト)であり、各大学は自らの2次試験で入学して欲しい学生の資質を問えるからです。

基本的に2次試験の内容は変わりませんから、1次試験がセンター試験から共通テストに変わることで受験生や父兄の皆さんが慌てる必要はありません。共通テストの問題形式を把握することは必要ですが、やるべき勉強の内容には変わりありません。

問題は入試改革のもう1つの柱であった英語の民間試験です。この問題については改めて述べるつもりです


(2020年 2月 6日) 【果実を得る人】 [▲ 先頭へ]

日本経済新聞は今年元日の第1面から「逆境の資本主義」という特集記事を連載しました。資本を集め、人を雇い、経済が拡大すれば社会全体が豊かになるという成長の公式が経済のデジタル化やグローバル化で変質し、格差拡大や環境破壊などの問題が噴き出しており、この逆境の向こうにある未来がどのようなものかという内容で特集が進みました。

1/3付け特集第2回目に、「知」が価値を持つ今は、年齢や肉体の衰えとは関係なく優れたアイデアを出す人が果実を得る、という文がありました。何故勉強しなければならないかに直結する文なので、中高生の生徒の皆さんに紙面を見せながら紹介しました。然るべきビジネスマンが読む日経新聞の1面特集でしたから、かなりの説得力があったと思います。

社会に出れば厳しい競争があり、様々な課題、問題が出てきます。しかし、それらに対する解を説明してくれる教科書はありません。課題や問題に対してアイデアを提案できるかどうかが非常に重要です。どうすればアイデアを思いつくことができるかについては、本欄で何回か紹介しているように、小柴昌俊東大名誉教授が回答しています。すなわち、知識と考える力の掛け算です。

創造力、独創性とは様々な要素の新しい組合せと言われています。アイデアを提案するためには創造力が必要です。様々な要素を新しく組み合わせて創造性を発揮するためには、小柴教授が言われるように様々な知識と考える力が必要です。

基礎的な知識を蓄え、考えることを実践し習慣化するのは正に中高生の時です。高校入試や大学入試を目標にして勉強することが、入試を突破するだけではなく、社会に出た時に活躍する基礎作りになっているのです。近い将来、優れたアイデアを出して果実を得られるよう、生徒の皆さんを鍛えるつもりです。


(2020年 1月30日) 【甘さは露呈する】 [▲ 先頭へ]

長い人生において勝負する機会は多くはありません。高校入試はその数少ない機会の一つであり、多くの人にとって人生初めての試練です。自分の人生を開拓するために前向きに取り組んで欲しいです。高校入試に向けての経験は3年後の大学入試に活きるはずです。

丁度一週間前、1/12の石川県総合模試の結果が戻ってきましたので、冬休み明けの統一テスト結果の両方を踏まえて中3クラスの皆さんと個別に面談しました。受験する公立高校について話す重要な面談でした。

当たり前のことですが、普段の努力の成果がテストや模試結果に表れます。模試結果はかなりの程度予想できます。しかし、頑張っていると思っているのに成績が伸びない場合もあります。今月の模試でも、統一テストの結果は悪くはないのに結果が芳しくなかった生徒さんがいました。そのA君と原因について話しました。ある科目で手抜きをしていたそうです。統一テストは何とか切り抜けたものの、取り組みの甘さが模試で露呈しました。

志望校再考を迫る模試結果にA君はかなりのショックを受けました。しかし、根性があるA君は志望校を下げることはしませんでした。強烈な刺激によって本気のスイッチが入ったようです。勉強の仕方は伝えてあるので、彼の頑張りを見守るつもりです。模試最終回は2/9に予定されています。その成績で志望校を最終的に決めれば良いと考えています。

模試結果の悪さはA君に相当なダメージを与えましたが良い教訓になりました。甘さがあればごまかすことはできないことが身に染みてわかったと思います。今回の経験は3年後の大学受験に活きるはずです。そして、社会人になった時にも活かされることでしょう。


(2020年 1月23日) 【センター試験 in 2020】 [▲ 先頭へ]

先週末に最後のセンター試験が行われました。月曜日に高3生は学校で自己採点をして、その結果と出願希望大学情報を大手予備校へ送ります。大手予備校は全国から寄せられた情報を処理して合格可能性を判定します。今日、高3生に判定資料が届きます。合格可能性を判定するシステムは昨日午後に公開されて自由に使えるようになっています。

今年のセンター試験は昨年より難しくなりました。文系、理系とも5教科7科目型900点満点で平均点が昨年より20点ほど下がりました。昨日発表された平均点・中間集計によれば、英語・国語・数学がそれぞれ数点低くなりました。

今年も英語と数学の問題を解いてみました。英語は昨年と同じ問題形式で、昨年よりは少し答えにくい問題があると感じました。平均点は4点余り下がりました。第1問の発音・アクセント、第2問の文法・語法、並び替え問題は来年からの共通テストではなくなります。それらの問題を解いていて感慨深かったです。読解問題はグラフや資料を使った問題、物語・論説文の問題など様々な種類の問題で、英語のセンター試験はよく工夫された優れた問題だと改めて感じました。これが変わってしまうのが本当に悲しいです。

数TAは平均点が去年より6点余り下がって53.25点でした。数TAの過去の平均点は約60点ですから今年は難しかったと言えます。確率の問題で与えられた選択肢の中から正しい記述を選ぶもの、「整数の性質」で循環小数と7進法が絡んだ問題などで苦戦した受験生が多かったと思います。数UBの平均点は51.58点で昨年の53.21点より少し下がりましたが例年並みの点数でした。数列の漸化式やベクトルの難しい問題が印象に残っています。誘導形式が特徴のセンター試験らしい問題でした。

来年からの共通テストにはまだ明らかにされていない部分があります。昨年6/7に大学入試センターは共通テストの出題教科・科目の出題方法について発表しましたが、昨年末に記述式問題の導入見送りが決まったので、新たな発表を待つ必要があります。しかし、英語や数学でやるべきことに違いはありません。一昨年の共通テスト試行調査の問題から考えると、英語では速読がポイントになります。数学は各分野の様々な問題に対する対応力の養成が必要です。速くて正確な計算力は大前提です。これらのことを念頭において高校クラスを運営していきます。


(2020年 1月16日) 【祈る気持ち】 [▲ 先頭へ]

いよいよセンター試験が明後日・明々後日に迫ってきました。今週は高3クラスの授業日程を少し変えて試験本番に備えました。試験会場の下見、試験当日の注意点などをまとめたプリントは先週配布しました。会場内の座る場所によって暑くなる場合に備えて薄物の重ね着が有効なこと、チョコレートとバナナが脳の活性化の裏ワザであることなどを記載しました。

時間との勝負という側面があるセンター試験は失敗し易い試験です。時間の使い方が非常に大切であり、ちょっとした判断ミスが大きな減点につながります。入試本番ですから多少のミスは仕方ありません。大きなミスをしないことが重要です。自分が確保したい点数を取る練習を積み重ねてきました。その成果が出ることを祈るばかりです。

昨年夏頃に、心優しいAさんはセンター試験のことを考えると怖くなると言っていました。そのAさんは夢をよく覚えていて、一か月前位の夢ではトラや白くまに追いかけられて食べられてしまったそうです。今年に入ってからは、学校の先生に石を投げられた夢(その先生はとても良い先生とのこと。)や人形に追いかけられた夢を見たそうです。怖い夢は大きなストレスがかかっている時に見るそうです。

Aさんとは長い間一緒に勉強してきました。たわいないことで笑ったことも多々ありましたが、何回も厳しい指摘をしてきました。その度に歯を食いしばって私についてきてくれました。怖い夢にうなされながら頑張ってきた彼女の努力を思うと涙が出そうです。勉強の神様はどのように評価されるでしょうか。

試験初日の土曜日の朝、神社へお参りに行き現役生、浪人生の皆さんの健闘を祈るつもりです。


(2020年 1月 9日) 【基本装備完了】 [▲ 先頭へ]

高2英語クラスの授業が順調に進んでいます。ほとんどの人が中2の時から通ってくれているので、高校入試段階で中学英語の基礎はしっかり固まっていました。高1の5月からまた一緒に勉強し始め、当ゼミの歴史の中で最も早いペースで授業が進んでいます。

英語の基礎は単語と文法です。単語は受験用単語集を使い宿題形式で少しずつ覚えています。センター試験に必要な水準の単語は昨年末に3回転目を終えました。文法は高1時に高校のグラマーの授業の進行に合わせて復習し、高2では文法・語法の問題演習を積み重ねています。また、英作に関しては、全国的に使われている英語構文の参考書をベースにしたオリジナル暗記例文集を基にした演習の2回転目を昨年末に終えました。

新年からは単語暗記演習は4回転目に入り、それが終わればセンター試験を超えるレベルの単語暗記に入る予定です。英作は基本演習が終了したので、今週から本格的な英作演習に入ります。日本語の英訳だけではなく自由英作文にも少しずつ取り組んでいくつもりです。発音・アクセント、文法・語法問題は来年の共通テストからはなくなる予定ですが、彼らの英語力の向上、将来受験するTOEIC等の資格試験のために問題演習を続けます。

昨年10月の進研模試の結果は悪くはありませんでしたが安心していません。高2クラスの皆さんは難関大学を狙っています。大都会の中高一貫校を意識すれば、来年の大学入試で戦える土台がようやくできたという感じです。入試で戦える武器が揃ってきたので、既に始めている2次試験の長文過去問演習を進化させ、英作の実戦練習を積み重ねていきます。1年後にどんな花が咲くでしょうか。


(2020年 1月 3日) 【発奮を促す言葉】 [▲ 先頭へ]

新年あけましておめでとうございます。

昨年印象に残ったことの一つに浪人時代に読んだ学習参考書を読み返したことがあります。昨年9月26日付け本欄でご紹介した「新釈 現代文」です。私の受験生時代にベストセラーになった参考書で、絶版になっていましたが、2009年に文庫版サイズで復刊されました。子供に読ませたいというオジサンたちの声がネット上で広がっていました。確かに、現代文に対する曇りを取り除いてくれた本でした。

受験生である読者に対する高田先生の警告の言葉が心に響きました。「筆者の関心する問題について、読者もまた相応の関心を持つことができるかどうか」がどうしても欠くことの出来ない前提であり、「現代文がわからないという場合の多くは、実はあなたがたの問題意識が極めて希薄であるか、または全然欠如していることの告白である」と先生は断言されています。

今の中高生はゲームやSNSのために勉強不足になりがちです。彼らのやる気を引き出すことが私の役目の1つです。あの手この手で彼らの意識改革を試みていますが、これからは高田先生の言葉も借りるつもりです。甘い考えでは学力は伸びないと指摘されている上記の言葉には迫力があります。問題意識を持つこと、そして考えることの大切さを説いています。本を示しながら語れば説得力があるものと期待しています。

なお、この本の中で、高田先生はどこどこまでも筆者を追跡しなさいと説きます。筆者の語調を感じとり、筆者の主張に耳を傾け、主張の根拠をはっきりと理解します。これが現代文を読み解くポイントです。高田先生のおかげで現代文に対する苦手意識を克服した私は、今は中高生の皆さんに少し言葉を変えてアドバイスしています。

今年も中高生の皆さんと対話しながら楽しく厳しく導くつもりです。どうぞよろしくお願い申し上げます。